日本学術会議第25期新規会員任命に関する政府の説明・対応を求める緊急声明

日本学術会議第25期新規会員任命に関する政府の説明・対応を求める緊急声明

                                               教育科学研究会常任委員会

                                          2020年10月9日

 

 菅義偉首相は、日本学術会議が第25期新規会員候補として推薦した105名のうち、6名を任命しませんでした。

 同会議は、日本学術会議法に定められた手続きに従って、内閣や政府からの独立性を持って、国の文化・科学や政治に対して、必要な提言や意見を表明する役割を担っています。もし、首相が、その独立性を保障している学術会議の人事に介入して、気に入らないものを排除できるようになれば、学術会議を意のままに支配することも可能になります。政府が学問研究に対して選別を行い、学術研究を歪め、憲法の保障する「学問の自由」を奪いかねない重大事態というべきものです。日本国憲法前文は「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにすることを決意」しています。「学問の自由」への侵害はこの決意を脅かします。

 それはまた真実にもとづく教育のあり方を大きく損なうことにつながる問題です。学問の自由が保障されなければ、教育は、真実に立った教育を行うことはできなくなります。それは日本が体験してきた悲惨な戦争の下で、学問の自由が奪われ、教育の内容が政府に監視され、真実が国民に隠された痛恨の歴史を繰り返すことにつながりかねません。

 私たち教育科学研究会は、第2次世界大戦への根本的な反省を踏まえた日本国憲法・教育基本法の理念を豊かに実現すべく研究・実践を行ってきた民間教育研究運動団体のひとつです。私たちは、憲法と教育基本法が保障する「学問の自由」を何より大切に思い、文化と人間発達に関する学問の成果に学び、子どもたちの学ぶ権利を最大限に保障する教育の実現のために、これまで親・保護者、市民とともに教育実践と教育運動を積み重ねてきました。学問の自由は教育の自由を保障する条件です。したがって、私たちは、今回の事態に強い危機感を抱いています。

 菅首相は、「総合的、俯瞰的な活動を確保する観点から、今回の任命を判断した」とのべました。しかしその説明は納得できるものではありません。

私たちは、菅首相が憲法および日本学術会議法に基づき、推薦された6名をすみやかに任命することを要求します。