常任委員会声明 政府が「日本学術会議の在り方についての方針」を撤回し、通常国会に法案提出をしないことを求めます
政府が「日本学術会議の在り方についての方針」を撤回し、通常国会に法案提出をしないことを求めます
2023年1月7日 教育科学研究会常任委員会
2022年12月6日、内閣府は日本学術会議とのこれまでの協議を無視した「日本学術会議の在り方についての方針」(以下「方針」)を公表しました。そこには「政府等と問題意識や時間軸を共有しつつ」という文言がくり返され、また会員の選考に「会員等以外による推薦などの第三者の参画」が記されました。
政府の問題意識との共有とは、例えば軍事研究など政府が求める学問研究を指すのではないか。そしてそうした研究を推進する会員を第三者委員会による圧力で選出させることになるのではないか。「方針」に対して、たちまちそうした懸念が広がりました。学術会議の政府からの独立性を脅かし、学問の自由を侵害することは、戦争に協力しない研究者が迫害され、戦争遂行に資する研究だけが利用された戦前の過ちを思い起こさせます。
この「方針」は、通常国会に法案として提出されようとしていますが、法改正でなければ解消されない問題があるという立法根拠が示されていません。12月21日の日本学術会議総会での内閣府室長説明では、「方針」は自民党PT(プロジェクトチーム)の要望と了承の上で作成され、与党が通常国会でなるべく早く法改正をしたい意向だと述べられました。「方針」は学術会議に「活動や運営の徹底した透明化」を求めていますが、非公開で行われた不透明な自民党PTと内閣府との密室協議での要望で法改正をするのだとすれば、独裁的であり、民主主義の破壊です。
私たち教育科学研究会は、2020年に菅義偉前首相が、日本学術会議が会員候補として推薦した105名のうち、6名を任命しなかったことに対して、すみやかに任命することを求める声明を発表しました。 しかしながら岸田政権になっても、理由を説明しないまま任命を拒否してきました。こうした中での今回の「方針」は、首相が学術会議の独立性を踏みにじって任命しないことへの根拠を後付けでつくろうとしているとも言えます。
学問の自由の下で、学術会議の独立性を保障し、科学・学問の世界からの自由な批判が展開されることは、日本の政治が、学術研究の成果を踏まえて民主主義的に進められていくためにも、不可欠の条件となります。今回の内閣府の「方針」は、それとは逆に、政府の政策を批判せず、むしろ推進するように学術会議の性格を変えようと意図するものです。それは、政府に盲目的に従う国民を育成し、学問の成果に依拠した教育の自由をも奪い、子どもたちの未来を暗雲で覆うことになるでしょう。
岸田政権は、こども関連予算を倍増すると言いながらも微増にとどめ、一方で軍事費を増額し、安保3文書を閣議決定しました。保育園での痛ましい事件・事故は保育条件の劣悪さが要因の一つです。労働条件の改善による教員不足の解消も、少人数学級の実現も、給食費無償化も本気で取り組もうとせず、いまを生きている子どもたちの命と成長を脅かしています。さらに軍事大国化は子どもたちの未来を戦争の危険にさらしてしまいます。こうした事態を批判的に吟味し、平和で民主的な社会をつくっていくためにも、学問の自由の保障が重要です。
平和と民主主義の社会をめざす日本国憲法下で、戦後のどの政権も尊重せざるを得なかった日本学術会議の独立性を、安倍・菅・岸田の歴代政権が侵害しようとしていることに対して、強く抗議します。 岸田首相は直ちに6名の会員を任命し、政府は「方針」を撤回し、法案提出をしないことを求めます。