月刊誌『教育』 2019年10月号

特集1
過敏な子ども・固まる子ども
特集2
学童期の子どもたちと泣き笑い
とびらのことば
みんなちがって生きること

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目次

特集1 過敏な子ども・固まる子ども

  • しらん・わからん・ほっといてが「あのね」に変わるとき大江未知
  • 痛み・苦しみに応えるひととして、保健室で天木糸子
  • 絶対に生まれ変わるんだ!──学んで生き直す高校生嵯峨山聖
  • 際(きわ)を渡る子どもたち荒巻りか
  • 「安全でありますように」唯野みゆき
  • 自己を形づくることを支える──保育園、学童保育、少年刑務所で片岡洋子
  • ノンケの僕とゲイの翔
  • 群れに紛れ込もうとする身構えに気づく──分断し序列化するまなざしを問い直す中村麻由子

特集2 学童期の子どもたちと泣き笑い

  • 「もめてなんぼ」の中学年鈴木啓史
  • 「ごめんね」「いいよ」で終わりません峠 綾香
  • じっくりほっこり向き合って──4年生は変化のとき武村恵理
  • やりたい自由、やりたくない自由──チャレンジクラブで渦ごす放課後森 賢悟
  • 9・10歳 発達の節をゆたかに生きる川地亜弥子

シリーズ

  • <子どもは地域の宝やき──土佐町からのたより> 議会デビューしました鈴木大裕
  • <子どもの風景> あさがおの種河野伸枝
  • <ちいさな教材・教具たち> 子どもが楽しめる鉄棒を①大西朱夏
  • <教育情報> 道徳教育の「転換」と授業──向き合い直される「読み物」高柳充利
  • <毎日がチャレンジ!> 生徒の「いま」を聴きたいみみ子
  • <「学校メガネ」をはずしてみたら?> 4年前の私へ、若い教師たちへ中田 雪
  • <円窓より ジェンダーのまなざし> 子どもの現状を国連の勧告から読む渡辺典子
  • <映画> 『エセルとアーネスト │ ふたりの物語』佐藤 博
  • <書評> 渡部昭男『能力・貧困から必要・幸福追求へ──若者と社会の未来をひらく教育無償化』石山雄貴
  • <図書紹介>
    • 佐藤卓己『流言のメディア史』
    • ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』
    • 友寄英隆『(人工知能)と資本主義──マルクス経済学ではこう考える』
  • 私の誌面批評 学校と教師のいまを考える画期的特集深澤 司
  • 『教育』読者の会
  • 研究会・部会のご案内
  • 教科研常任委員会だより
  • 教育月報高津芳則
  • 編集後記

とびらのことば

みんなちがって生きること

「〜しなさい」「〜してはダメ」という指示や叱責と同時に、「そう、えらい。そうするんだよ」という褒め言葉で、ある型に誘導操作してしまうような子育てや教育に対して、「嫌だ」と心身で訴える子どもたちがいる。

周囲のことばや振る舞いに過敏に反応して、感情が高ぶり、怒りだしたり泣きだしたりしてしまう子ども。他方、いつも誰かと比べられている気がして、周囲からの期待に沿えない自分に劣等感を抱き、自分が感じたとおりに反応したり表現したりするとバカにされる、責められると警戒してしまって身体と心を固くしている子ども。そんな「過敏な子ども・固まる子ども」たちがお互いを避けたり恐れたりしないで交流し理解し合うためには、固まった身体や心をほぐし、安心して自分の気持ちを表現することを支えたり、攻撃的に見えるふるまいや荒々しいことばの裏にある意味を翻訳して伝え、共感するおとなのかかわりが必要だ。

発達障害がある、性別違和がある、同性愛者である、日本と異なる文化や習慣のなかで生きているなどの人々は、凝り固まった「ふつう」や「あたりまえ」が疑われない日本社会のなかでは生きづらい。同時に、その生きづらさをつくりだしている「ふつう」や「あたりまえ」は、この社会に生きる多くの人々をも縛り自分らしく生きることを妨げている。自分とは異なる感じ方やふるまいをする他者と向き合い理解しようとするとき、私たちは自己を問い直しつくり変えていく。多様性が認められる社会とは、すべての人が自己と他者の多様性を知り、尊重し合うことで成り立つ。

編集後記

  • 特集1は、生きづらさを抱えた子どもや若者の実像に迫り、彼らが提起している問題について考えてみた。
  • 彼らの多くは「普通の子ども」に比べて、傷つきやすく自分を責めがちな、いわば「過敏な子ども」として「普通の大人」たちには映る。しかし本当にそうか。「生きていることに意味はないです」とつぶやく美彩さんをはじめとする子ども・若者を支えている荒巻さんの「怖いのは、彼らには『死』がものすごく近くにある」という言葉をどう受けとめればよいのだろう。旧ソ連の教育学者・クルプスカヤはいまから100年前のロシア帝政末期に若者が数多く自殺する背景には、彼らをこの世界につなぎとめるものがないからだとしていた。日本の子ども・若者の自殺率の高さも似たような背景があるのだろう。そうだとすれば、問題は彼らにあるのではなく、彼らをつなぎとめることのできない社会そのものの問題として考える必要がある。
  • 一方で彼らをこの世界につなぎとめようとしている大人たちもいる。養護教諭の天木さんは、手当てという「行為」そのものではなくて、「痛い・苦しい」ことに応答してくれる誰かを彼らは探しているのだという。高校教師の嵯峨山さんは、自殺未遂経験のあるK君の入学からの成長過程には、正解のない「課題をめぐる旅」が、互いに遠ざけ合っていたクラスメイトをこの世につなぎとめる誰かとして認識させたのだろうという。ケアと学びを考える切り口はここにあるのだと思う。
  • 特集1は荒巻りか、大江未知、片岡洋子、中村麻由子、中嶋みさきが担当した。特集2は、関西企画として吉益敏文、神代健彦、石垣雅也が担当し、子どもの発達を支える教育実践を検討した。
  • 次号から表紙・レイアウトを変更する。どう変わるかはお楽しみに。 (佐藤隆)