月刊誌『教育』 2023年11月号

特集1
学校の働き方改革 クライシスからぬけ出す道へ
特集2
「子どもの権利条約」と国・自治体・学校ーーこども基本法・こども家庭庁始動の中で

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目次

特集1 学校の働き方改革 クライシスからぬけ出す道へ

  • 支配としての給特法改正問題──新自由主義と分断統治を乗り越える教育運動の課題髙橋 哲
  • 学校を、人を育てるにふさわしい場に/全教調査より糀谷陽子
  • <座談会>熟論「教員の働き方改革」現場×研究者×ジャーナリスト氏岡真弓、髙橋 哲、千葉春佳、石垣雅也(司会・聞き手)杉浦孝雄、本山 明
  • 日本の公教育を崩壊させない──「埼玉超勤訴訟」第二次訴訟へ江夏大樹
  • 教員定数算定制度の再構築──「乗ずる数」を知っていますか山﨑洋介
  • 学習指導要領の国家基準化がもたらす教員の多忙化問題石井拓児

特集2 「子どもの権利条約」と国・自治体・学校ーーこども基本法・こども家庭庁始動の中で

  • 子どもの権利とこども大綱山岸利次
  • こども基本法と地方自治──子ども条例でつくる自治体の「かたち」野村武司
  • 子どもの権利条例の検討状況──こども基本法の成立を受けて瀧口 優
  • 子どもの居場所づくりから条例へ渡部達也
  • <座談会>学校でこそ「子どもの権利条約」を!──生徒手帳に条約を載せるまでの道のり今川つかさ、伊藤菜穂、林 小桜、出雲圭子、(聞き手) 、瀧口 優、前田晶子

シリーズ

  • <ちいさな教材・教具たち>獅子舞と子ども達と私と②──獅子舞を通した新しいつながり石坂凜人
  • <子どもの風景>簡易給食って、どないやねん! 大江未知
  • <「学校メガネ」をはずしてみたら?>少しだけ子どもに優しくなる方法天木糸子
  • <円窓よ──ジェンダーのまなざし>教科研全国大会に参加して溝部宏文
  • <毎日がチャレンジ!>大人への階段橋本 岳
  • <教育情報>学校給食無償化の動向と課題田沼 朗
  • <映画評>『シアター・キャンプ』石井郁子
  • <書評>
    • 阿比留久美『孤独と居場所の社会学』荒巻りか
    • 楠凡之・丹野清彦『感情コントロールに苦しむ子ども』上野琢也
  • <私の誌面批評>適応ではなく権利主体に渡辺雅之
  • 教育の言葉中村(新井)清二
  • 『教育』読者の会
  • 教科研常任委員会だより
  • 教育月報高津芳則
  • 編集後記

特集 とびら

【特集1】

学校の働き方改革は待ったなしである。その事実を疑う者は誰一人としていない。

それもそのはずである。2019年「中教審答申」以降、行政はあれやこれやの「働き方改革」を打ち出したが焼け石に水、2022年度に実施された様々な「勤務実態調査」の結果は、教員の長時間過密労働が一向に改善されなかったことを如実に表している。

そればかりではない。「ブラック」と言われる実態を目の当たりにして、教員選考受験者は減少の一途をたどり、長年にわたる行政の不作為の結果である「教員不足」が、教室に穴があくという事態を全国に現出させている。もはや問題はひとり教員の問題ではなく、子どもや保護者、市民にかかわる問題、公教育の存立にかかわる問題として立ち現れてきているのである。

こうした深刻な事態を前に、さすがに自民党も文科省も前回とは「異次元」の「教員の働き方改革」を喧伝している。がしかし、業務の見直しや定数、予算などの抜本策を欠いたままの「改革」は、前回の轍を踏むことにならないだろうか。一皮むけば安上がりに教員のなり手をかき集める方便になってはいないだろうか。さらに進んで学校教育の支配強化と公教育の解体に進む危険はないだろうか。『教育』は前回「改革」以降、四度たび「学校の働き方改革」を特集してきた。やり直しのきかない現実を前に、「ブラック」を嘆くことに終わらせず、改めて深く現実を掘り下げ、そのクライシスから抜け出す道を、教育の灯をともし続ける立場から探りたい。

編集後記

教員の働き方がブラックだということが、世間に認知されるようになって久しい。その声を受け、ようやく国も改革に着手するようになったが、どこまで実効性ある改革となるかは、かなり怪しい部分もあるようだ。

世間では、「定額働かせ放題」にもつながりうる給特法の問題性に注目が集まるが、問題はそれだけにとどまらない。たとえ給特法が廃止になったとしても、「教員の自発的行為」という解釈がまかり通る状態では、長時間労働に歯止めはかからない。その意味で、単に制度の問題というだけでなく、運用・解釈次元での力関係も検証・改革していかねばならない。

各種専門職は、「実践的意義」が先行し、「労働」という観点が見失われがちだが、教員の労働問題は、そのまま子どもたちへの教育の質保障にかかわってくる。それに対する答えは単純明快で、「教員を増やす」ことに尽きるだろう。小手先の「改革」や「手当」だけでどうにかなるものではなく、教育の基幹部分にどこまで予算を投じられるか、国としての姿勢が問われている。

教員の働き方は、子どもの権利保障の要の一端である。各種「教育改革」が叫ばれる一方で、こども基本法が制定され、こども家庭庁が発足した。今後、どのような施策が展開されていくか、まだ未知数であるが、その動きに先行する形で、各地で子どもの権利条例の制定が相次いでいる。

法や条例は、「つくる」過程での攻防も重要な争点となるが、いったんつくられた法制度を、「どのように実質化していくか」という部分も欠かせない。「権利」は法文のみにあるのではなく、現場に即した運用・活用によって実質化していく。第二特集では、各地で取り組まれている動きを探ってみた。

特集1は杉浦孝雄、本山明が、特集2は前田晶子、瀧口優が担当した。(南出吉祥)