同志社国際高等学校の研修旅行等に関する文部科学省報告書への抗議声明
教育科学研究会常任委員会は、標記の件について以下の通り声明を発表いたします。
同志社国際高等学校の研修旅行等に関する文部科学省報告書への抗議声明
2026年5月30日
教育科学研究会常任委員会
本年3月16日に沖縄県名護市辺野古沖で小型船が転覆し、同志社国際高等学校(京都府京田辺市)の研修旅行中の生徒と船長のお二人が亡くなるという事故が発生しました。
事故により命を落とされた方々、ご遺族、関係者の皆様に深く哀悼の意を表します。
5月22日、文部科学省は、この事故を受けて「同志社国際高等学校の研修旅行等について(これまでの把握事項と文部科学省の見解)」(以下、「文科省報告書」と記す)を公表しました。文科省報告書では、「今回の研修旅行のプログラムにおける学校の安全管理・安全確保の取組は、著しく不適切であったと考えられ、是正を図る必要がある」とするとともに、米軍基地の「辺野古への移設工事に関する学習について、政治的活動を禁じる教育基本法第14条第2項に反するものであったと考えられ、是正を図る必要がある」としています。
学校行事である研修旅行中に生徒が亡くなるという痛ましい事故に至った同校の安全管理およびそれに関連する教育活動については、教育の自律性を確保したうえで今後とも慎重に検証されていくべきものです。
しかしながら、文部科学省が辺野古に関する同校の平和学習を教育基本法(平成18年法律第120号)第14条第2項に反すると認定したことは、教育行政機関の裁量権を逸脱した不当な行為であり、教育科学研究会常任委員会はこのことに対して以下の理由から厳重に抗議します。
第一に、文部科学省はそもそも教育活動の政治的中立性を裁定する資格を持つものではありません。文部科学省は、政党政治の下で法令に従って行政を執行する政府の一機関であり、同省の見解が政治的中立性を確保できる保証はありません。むしろ中立性とは、本来、権力からの教育の自由を保障するための理念として、国家権力こそが従わなければならない規範です。それに対して、文部科学省が教育基本法第14条第2項違反との見解を示したことは、国家が「政治的中立性」の裁定者として個々の学校教育実践を直接監視し、取り締まる位置につくことの公然たる宣言というべきものであり、教育の自由を侵す重大な事態として、到底容認することはできません。
第二に、文科省報告書において辺野古に関する同校の平和学習を教育基本法第14条第2項違反と認定したことは、条文に照らして飛躍があります。政治教育に関して規定した同法第14条の第2項では、「法律に定める学校は、特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育その他政治的活動をしてはならない」と記されており、具体的には「特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育」が挙げられるのみです。これに対して文科省報告書では、辺野古に関する同校の平和学習について、「様々な見解を十分に提示していたことが確認できず、特定の見方・考え方に偏った取扱いであった」ことなどを理由として、「総合的に勘案すれば、〔・・・・・・〕政治的活動を禁じる教育基本法第14条第2項に反する」としています。こうした抽象的な判断基準をとるならば、政府が進めようとする施策に反対する立場の意見について学校教育で取り扱うこと自体が、教育基本法の禁じる政治的活動に該当するものと見なされてしまう恐れがあります。
そして第三に、学校法人同志社では、第三者により構成される特別調査委員会の設置を決定し、また平和学習の内容も含めた教育活動の適切性については、特別調査委員会による調査とは別に、同法人において改めて外部の教育専門家等を含めて検証していくことを予定しています。それにも拘わらず、それらの検証結果を待たずに文科省報告書が公表されたことは、文科省報告書の社会的影響力の大きさを勘案すれば、教育の自律性を阻害する危険性を持つものと言わなければなりません。
平和学習は教育基本法の理念にも合致するものであり、文科省報告書によって学校教育の現場が委縮させられることなく進められるべきものです。教育基本法では「平和で民主的な国家及び社会の形成者」としての国民の育成を謳っており(第1条)、また「良識ある公民として必要な政治的教養は、教育上尊重されなければならない」(第14条)とされています。文部科学省には、教育の政治的中立性を振りかざして教育現場を委縮させるのではなく、教育の自律性を保障しつつ平和学習の発展を見守る姿勢を求めます。
以上
