
月刊誌『教育』 2017年7月号
- 特集1
- 教師――悩みから学びへ
- 特集2
- 人工知能と公教育
- とびらのことば
- 教師としての学びと育ちの物語を考える
定価990円 / 各号、書店/インターネットにて販売中。
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目次
特集1 教師――悩みから学びへ
- 教材・教師・子どもがつくる「物語」へ──テルヤから学んだ子ども理解
- 学びと育ちの物語
- 等身大の自分で子どもと生きる
- 「教師って何なんだ」──学び考える場との出会い
- 「評価の視線」にとらわれない
- サークルで深まる教育実践──ダボハゼの会のこれまでとこれから
- 教師を生きる──私の場合、そして若い教師たちへ
- 教師の学びと育ち──研究者の視点から
特集2 人工知能と公教育
- 機械じかけの公教育──203X年、科学技術革新がもたらす一つの未来
- 「知識基盤社会」の進展と人間労働の未来──人間とロボットの関係を考える
- 科学技術が徳育の条件となる未来
- 教師の「終活」!?──あるいは、「時間泥棒」との闘い
シリーズ
- <経済レンズをかけてみる>トランプ減税と有害な租税競争
- <子どもの風景>子どもたちに支えられて
- <ちいさな教材・教具たち>感情・生活・ことばをつなぐ
- <毎日がチャレンジ!>つぎはぼくがまもるばんだよ
- <円窓よりジェンダーのまなざし>貧困を直視しない道徳教材
- <読書と私>「音読」を通じて
- <書評>『考えてみませんか 9条改憲』
- <子どもと本>渡辺大輔監修『いろいろな性、いろいろな生きかた』
- <私の誌面批評>私たちのことを、私たちとともに
- 第56回教育科学研究会全国大会のご案内 - 『教育』読者の会
- 研究会・部会のお知らせ
- 教科研常任委員会だより
- 教育月報
- 編集後記
とびらのことば
教師としての学びと育ちの物語を考える
- 教職課程のなかに「教職実践演習」が設けられてから、教員養成のスキル主義的な傾向が強まってきている。現職教員研修についても、教育公務員特例法等の一部を改正する法律が昨年月に成立し、文部科学省が策定する指針を参考にして教育委員会と関係大学で教員研修計画を定めていくことになった。大学の教職課程も細かく統制されようとしている。
- かつては、職場での自由で豊かな教師同士の学び合いがあり、学校外にも民間教育研究団体による自主的な学び合いが多数存在していた。しかし、それらが衰退し教師の豊かな学びと育ちの場が減ってしまっている。その一方で、教育行政が主催する教員研修は、教育政策に教師を服従させる訓練のような性格を強めている。
- 若者たちも、学校の競争主義的な雰囲気のなかで、失敗を避け、同調的な行動をとらざるをえない環境のもとで育ってきた。その結果、厳しい議論や批判を避け、問題のないように装って、日々を乗りきろうという心理が若い教師たちに生まれたとしてもそれを責めることはできない。
- しかし、一見閉塞的に思える状況のなかでも、私たちのまわりでは教師同士の学び合いの会がいくつも生まれ、活発な活動が行われている。そこでは、現実と向き合う新しい学び合いが間違いなく広がり始めている。
- 現在の日本で、教師はどのようにして学び・育っていくのか。その方法・可能性を、全国各地の教師たちの経験と実践、分析的な考察をとおしてみんなで考えてみたいと思う。
編集後記
- 新年度が始まって2か月。学級づくりの方針も見えてきたころだろうか。去年とは違う課題を抱え悩んでいる人もいるかもしれない。教師の仕事は一期一会、これまでのやり方が今年も通用するとは限らない。
- 特集1はその宿命をもつ教師の仕事の難しさとおもしろさを明らかにするために、各世代の教師の手記で構成した。 若い高橋さんは、「子どもと真摯に向き合う」ことの大切さを信じる自分にとって、教師が互いに競わされるいまの学校の窮屈さを訴える。中堅の東畑さんは、自身の病を契機に子どもとのかかわり方が変わったことを振り返り、感情労働としての教師の仕事の繊細さを確認している。そして、ベテラン教師の太田さんの手記からは、目の前にいる子どもの姿から、 年前の初任の自分を、昨日のことのように思い出せる教師の「職業的な凄み」を感じる。
- これらの手記に共通しているのは、教師として成長する上で欠かせないのは、子どもから学び、仲間から学び、自分をつくり変えていく自由でしなやかな感性だ。 「恵那の教育」を担った石田和男は、「教師は魂の技師」だと言ったとされるゴーリキーの言葉に寄せて「魂は真に自由であることによって魂となりうる」と述べているが、困難を抱えながらも精神において自由を求め続けることが大切だと思う。
- 転じて特集2は、進化を続ける人工知能(AI)が教師の仕事を奪うかもしれない未来を予測してみた。仮にいつかそうなるにしても、教育が真に教育であるためには、現在の教師たちが「人間としての教師」を生き続ける努力の先にしかない。
- 特集1は山﨑隆夫・池田考司が、特集2は山本宏樹・神代健彦が担当した。(佐藤 隆)